自粛生活

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「もしもし、圭悟(けいご)? (さとし)だけど、今話してて大丈夫か?」 「今暇だよ」 「元気にしてるか? シン・ウイルスにやられてないか?」 「元気だよ。おまえもだよな?」 「ああ」 「しかし、電話とは珍しいな」 「まあ、圭悟と全然飲めなくなったからね。リモートワークだし、他の飲み会も中止だし、あまり人と話す機会がないよ」 「そうだな」 「自粛生活になって、一人の時間が増えただろ。そうしたら、なんだか故郷が懐かしくなってさ。同郷のおまえと話がしたくなった」 「何だか塩らしいな」 「急に昔のことを思い出したんだ。今まで忙し過ぎて忘れていたことをね」 「そうか、俺もそうだ」  僕達は今までしたこともなかった小学生の頃の話に花を咲かせた。 「覚えてるか? 黒板のチョーク入れの中にカエルの死骸を入れたの」 「あったなあ。若い女の担任がキャーとか叫んでさ。教室から泣きながら飛び出してびっくりしたよ」 「まさか泣くとは思わなかった」 「あの後、女子から攻撃されるし、他の先生から怒られるしで大変だったなあ」 「でも、あの頃いろんないたずらできて僕は楽しかった」 「俺もだ。そういえば、お前と絶交をしたこともあったぞ」 「ああ。けんかすると絶交とか言ってたな。女子同士のがよく絶交してたけど」 「で、いつのまにか仲直りした」 「絶交なんて言葉、今じゃ、聞いたこともない」 「なんだかんだで、大人になってもこうして話せるのは俺達、気が合ったってことだ」 「同意」 「それにしても、俺は自粛生活が板に付いて、結構楽しんでるんだぜ。元々インドア派だし」 「まあ、そう言われたら、僕も映画やドラマを観たり、本を読んだりして、かえって充実しているぐらいだ」 「お互い一人暮らしだから、人一倍健康に気をつけような」 「確かに。健康第一だ、本当に」 「じゃ、またな」 「じゃあ、また」  僕の心は安まった。やっぱりあいつと話すと違う。
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