0人が本棚に入れています
本棚に追加
たまにいるよね。「いいよね、兄は。弟はお下がりしかもらえないし。」って言ってくるようなやつ。
俺はもしそういうやつに出会ったら、こういい返してやる。
そういうお前らにお兄ちゃんの気持ちがわかんのか?と。
「どうしたの?お兄ちゃん。悩みがあるなら言ってごらん?」
「それを現在進行形で作り出しているお前に言われてもな…」
俺は今、晩飯の味噌汁を作っている。
鍋の中には既ににんじんと大根が入っていて、このあと豆腐やら味噌やらを入れなければいけない訳だが。
それは今、少し離れた台の上にある。動けば取れるが、動こうとしても足が全く動かなかった。
下半身不随にでもなったか?と思って見下ろすと、驚くべきというか、案の定というか、1人の少女が抱き着いていた。
言わずもがな、佐織である。
普通なら幸せを感じてもいい場面だが、俺には全く感じられなかった。
「というか、いい加減どいて?やりづらい。」
「ヤダ。」
という調子で、先ほどから離れてくれない。
まずい。このままでは、ただのにんじんと大根を出汁に突っ込んだだけのものになってしまう。
Q.味噌汁を完成させる方法を、簡潔に述べよ。
〈解〉
味噌汁を作るために必要なものは味噌と豆腐。
それらは両方離れたところにある。
取りに行くには。佐織を足から離す必要がある。
そのためには、佐織が俺よりも惹かれるものを用意する必要がある。
佐織が俺より惹かれるものーーはっ!
「佐織。ちょっとあっちで漫画読んでてくれないか?」
「ヤダ♡」
いや無理だろこれ。漫画にも釣られないのか。
どうしろってんだよ。万策尽きたよこれ!
と、そこで、
「あ!」
「?」
俺の頭に、天啓が降りた!!!
最初のコメントを投稿しよう!