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プロローグ
じめじめと肌にまとわりつく梅雨の日。
真っ黒な喪服に身を包んだ人たちが、次々に訪れる式場。
時間に余裕があるため、広いロビーに人がごった返す。
鼻をすすり、ハンカチを濡らすほど悲しみに溢れたその場所から扉を挟んだ一室で、まだ十四歳の野崎恭弥は、固い顔で祭壇を前に立つ。
蝋燭の炎が揺らめく元で、柩の中に眠る人。
その人物をイメージしたかのような青い花が、祭壇を彩る。
そしてこの式が誰のために行われているのかを示す、祭壇中央に飾られた一枚の写真。
そこに写るのは、紛れもない恭弥の父親だった。
プロのアーティストとして、そして人気バンド『Multiaction Program』のベーシストとしてステージに立っていた実父、野崎恵太である。
突然の死。
写真なんて普段撮らないものだから、最新のアーティスト写真を拡大し、遺影として使った。
だからなのか、家で見るような親父臭さはなく、随分と美化されている。
最後に恭弥が父に会ったのは、亡くなった日の朝。
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