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「音楽で生計を立てていた家に生まれて、幼い頃から音楽をやるには適した環境だった。だから必然的にベートーヴェンも音楽に関わって育った。うらやましい生活にも見えたが、母親は病死、父親は酒をやめられず。色々と大変な思いをしてきたわけよ」
つらつらと書かれる生涯の記録。
それをメモするのにクラスメイトたちは必至になっている。でも、恭弥は聞いていくうちに、頭がひどく痛み始め、ノートをとる手が止まった。
あいにく痛み止めは今日、持ってきていない。市販の薬を服用していたが、昨日使い切ってしまった。
薬が無ければ、我慢するしかない。チョークの音でさえも頭痛を助長させるため、唇をかみ、嫌な汗をかきながら必死に時間が過ぎるのを待つしかない。
「そしてさらに音楽家として致命的な問題が起きる。さあ、何だと思う? はい、今、目があったから答えて」
「えー、知らなーい」
「だよねー。マニアじゃなければ知らないよねー」
適当に指名したものの、答えを全く知らない女子生徒は笑ってごまかす。篠崎も知らないということをわかっていたようで、再び黒板に向かう。
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