Track2 作られた日

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 教室内の明るい声に、鋼太郎の呟きは消えていく。  一方で恭弥は、ここ最近鋼太郎と共に過ごすことが多かった時間を、今日は以前と同じように、1人でいられる場所へ逃げ込んだ。 「野崎くん、久しぶりね……ってまあ。酷い隈ができてるわよ? 体調よくないのね。ベッドなら空いているわ。使って大丈夫よ」  昼食をとることなく、まっすぐ保健室に行けば養護教諭に迎え入れられた。  久しく利用していなかった窓際のベッドへ行けば、心配そうな顔をする養護教諭にカーテンを閉められる。やっと体を休められると、ベッドに体を埋もれさせフカフカの毛布でくるまる。  枕元にはスマートフォンを置き、制服がしわくちゃになるのも気にせず、縮こまった。  午前の授業は苦痛だった。  心が疲弊して、体力も削られた状態で、今後の楽しみもなく耳から入る音に集中しなければならない。しかも後ろの席には鋼太郎がいる。  人の目が気になる。  今後が不安になる。  一瞬たりとも気が抜けない。 (帰りてぇ……午後どうしよう……)  昼休みが明ければやってくる授業。幸いにも大嫌いな体育ではない。しかし、出席日数が危うい科目である英語である。  恭弥は昼休み中ずっと悩み抜いて、午後一の授業である英語を受け、その時の状態を見て帰ろうと決めた。  食欲もなく、授業開始時刻ギリギリに教室へ戻った。  結局保健室で一睡もしていないので、体調は変わりなく悪い。ただ、出席日数のためだけに教室に留まる。 「大丈夫か?」  席につこうとしたとき、体を前のめりにして鋼太郎が声をかける。だが、恭弥から返って来るのは「ああ」という弱く短い言葉だけ。明らかに元気のない姿。恭弥のことを顔に心情が出やすいと言っただけあって、状態をくみ取っていた。 「野ざ――」 「はーい、席に着いてー。授業、始めますよー」
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