8人が本棚に入れています
本棚に追加
小太りの教師が教材片手に教室へとやってきたとき、授業開始を告げるチャイムが鳴る。
もう少し話を聞こうとして鋼太郎だったが、遮られてしまい口を閉ざした。
英語の授業。
教師が英文を読み、訳を生徒にさせる。校内でも学力は下から数えた方が早いほどの恭弥は、それをろくに聞こうともせず、窓からじっと外を見ていた。
授業が始まってから30分ほど過ぎたとき、閉じていた教室の扉をノックする音で、授業が止まった。
なんだなんだとクラスがざわつく中、教師が廊下へと向かう。急にうるさくなったために、恭弥の視線もそっちへ向いた。
ほんの数十秒だけ、廊下で何かを話したかと思うと、教室に戻りまっすぐに恭弥の隣はやってきた。なぜやってきたのかわからず、恭弥は目を見開く。
「野崎。こういうことだ。お前、荷物を全部まとめてすぐ廊下に出ろ。詳しくは篠崎先生が説明してくれる」
教師が真剣な顔で半分に折られた小さな紙を恭弥の机に置いた。
おそるおそるそれを手に取り、教師の顔を伺いながら開いた。
「なっ……! そ、んな……」
見てすぐに、サッと血の気が引き、手も声も震えていた。
最初のコメントを投稿しよう!