Track2 作られた日

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 だったら傷付かぬように守ろうことに呈した。  だが今、先ほどの表情。死にそうな顔で出ていった恭弥。 つい先日起きた揉め事で気を落としてることを心配していた上に、家族が事故に遭ったとの連絡。  いくら動揺しているとはいえ、顔を見ることも反応することもなかった恭弥。  鋼太郎は何一つ、恭弥を守ることは出来ていなかったことに悔しさを覚える。  そして今、ありもしないことを噂されている。  鋼太郎は恭弥が苦しむ理由を知っているが、それをここでクラス全員に言うわけにもいかない。  そうなれば、本人がまた、苦しむかもしれないから。 「適当なことを言ってんじゃねぇよ……」  恭弥のことを何も知らない、何も知ろうともしないクラスメイトたちに苛立ちが募る。  だけど、強く言い返すこともできない。  また、自分が何かを言ったところで、クラスの空気が変わるはずはないと諦めもある。  何も出来ない自分へ対する苛立ちからチッ、と舌打ちをし、目を窓の外へ向ければ、恭弥がよく見ていた真っ青な空が広がっていた。 「片淵。席に着け。ほらほら、全員静かに。授業再開するぞー」  教師がパンと手を叩き、授業を仕切りなおす。  鋼太郎は悔しそうな顔をしながら座った。他の生徒たちも「えー」と文句を言いながら、前を向きなおし、しぶしぶ授業を受けるのだった。  ☆  教室を出た恭弥は、廊下で篠崎と会った。  いつものへらへらとした顔ではなく、眉間に皺を寄せた篠崎に。 「送っていく。自転車より、そっちの方が早いし。詳しい話は車の中でしよう」 「……は、い……」  篠崎は急ぎ足で階段を下りていく。恭弥の足取りは重かったが、胸をぐっと抑えながら昇降口へと向かった。 (やっぱり、俺のせいで……俺が音楽を。こんなことしてるから、だからっ)  頭の中で今朝の夢がよみがえる。  いつも背負って登下校し、練習では肩にかけて慣れているはずのベースが何倍にも重く感じた。  教職員と生徒が出入りする場所が違う。  恭弥の足が遅かったこともあって、先に篠崎が外へでて生徒用昇降口で待っていた。
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