7人が本棚に入れています
本棚に追加
保健室を常習的に使っているために、利用は十七時までであることを知っている。養護教諭が融通を利かせて時間をオーバーしてまで恭弥を休ませてくれていたのだ。
「……ああ。大丈夫、です。俺、帰ります。あざした」
少しは和らいだものの、まだまだ頭がズキズキと痛む。出来ればもう暫く休んでいたい。でも、このまま長居すれば、迷惑をかけてしまう。
早く帰らねば。その思いで何とか体を動かす。ベッドに腕を立てて起き上がろうとしたとき、視界が歪んだ。それでも堪えながら、何とか起き上がる。
「ちょっと、フラフラじゃない! 野崎くんのお家、近いわよね? 家まで送りましょうか?」
「いや、いいですよ。大丈夫っす。帰れますんで……」
人に迷惑をかけてはいけない。
頭を抑えながら、ベッドからゆっくりと出た。ぐらぐらと揺れる視界が正されるのを待つことなく重い腰を上げる。
よろよろしたまま保健室を出ようとしたが、あまりにもふらついているために何度も呼び止められた。しかし、人と会話をする労力が惜しい。養護教諭には悪いが、小さく頭を下げて保健室を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!