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このまま手ぶらで帰れたらよかったが、自転車の鍵が手元に無い。教室に残されたバッグの中にあるのだ。
体のダルさからかなり億劫であったが、フラフラとした足で何とか教室に向かう。
夕陽が差し込む教室には、まだ友人たちと談笑する人や、一人机で何かをしている人がいた。
しばらく姿を消していた恭弥が教室に戻ってきたことにより、その人達の目が恭弥を捉える。
(俺を見るんじゃねぇよ……)
残っていた生徒の中でも恭弥の席の後ろ、窓際の最後尾に座っていた男子の目が、ギラリと光ったようだった。彼の鋭い目にひるみ、一瞬だけ体が固くなるが、互いにすぐ目を逸らす。
その彼の長い足が机からはみ出していたが、恭弥が来たことでサッと曲げ、邪魔にはならなかった。
全校集会、ホームルームを欠席したことについて、誰も問いかけることも心配することもない。
『またサボりかよ』
『何あれ。男のくせに病弱アピール?』
『友達いないでしょ、あれ。ぼっちキモ』
そんな声が聞こえてくるような気がして、目を合わせることも、口を開くこともないま、まそそくさと荷物を回収して教室を出た。
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