プロローグ

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 これから打ち合わせがあるから行かねばならない。その背中を見送ったのだ。  作詞作曲から編曲、楽曲提供まで幅広く行っていたので、毎日とても忙しそうだった。  実の息子に構っている暇がないほどに。  物心つく前に母親も亡くなっているため、父と祖父母と共に暮らしてきた。  授業参観はいつも祖母。だけど、音楽会は必ず父がコッソリと見に来た。  運動会では、祖父母に父、さらに父のバンドメンバー全員が参加。何処の家にも負けない賑やかさが恥ずかしかったけど、嬉しかった。  そんな日々を送っていたから、寂しいという思いはしたことがない。    例え父と話す機会が少なくても、活躍する姿を色々なところで見ることができたから。  ステージに立ち、楽しそうに弾く姿。  その曲が多くの人の原動力となっている。  父の作り出す曲が好きだった。  大勢の人を動かす父が誇らしかった。憧れていた。  だから、父のようになりたかった。  曲を作り、最高傑作ができたら父に聴かせてビックリさせよう。
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