Track1 最悪が連なる日

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 年齢も顔も知らないSNS上の友人、『木の葉』からの言葉が心の支え。  すぐさま『ありがとうございます』と短い定型文を送れば、木の葉からは既読の意味を含んだイイネのボタンが返ってきた。  自分のことを見ている人がいることにホッとし、こわばっていた筋肉が緩んだ。  無駄な力が抜けたおかげで、気力が戻り、体を動かす力が湧いてきた恭弥は、大きく深呼吸をし、ベッドから起き上がる。  せっかく温めたご飯が、冷めてきていたが、それをゆっくりと口にした。  頭はご飯を求めていなかったが、胃は求めていたらしい。食べきらないと思っていた夕食は、時間をかけて全て胃袋におさまった。  その後すぐに痛み止めを飲み、シャワーを済ませる。  再び頭が痛む前に、恭弥は早めに床に就いた。  ☆  朝を告げるアラームに起こされ、寝ぼけ眼のまま自転車で学校に向かう。今日の空は厚い雲に覆われていて薄暗い。それを見ながら、ぼんやりとペダルを踏む。 (雨、降りそうだな……カッパはあったっけ。無ければ歩けばいいか……ああ、そうだ。昼飯買っていこう)  天気予報など確認していない。これから雨が降ろうが、雷が鳴ろうが、槍が降ろうが、学校と家の往復するということは変わらないのだから。  必要最低限の食事を買うために、道中見えたコンビニに寄り、今度こそ学校に向かった。  学校につき、自転車を止める。すると、登校してきた生徒たちがきゃあきゃあ言いながら小走りで昇降口に向かっていった。 (やっぱり降ったか……)  空から落ちる大粒の雨。  恭弥も自転車置き場から、昇降口までほんの少し走った。  それでも濡れてしまった体を、しまっていたタオルで軽く拭きながら上履きに履き替え、教室へと入っていく。
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