Track1 最悪が連なる日

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 心の疲弊があったために、保健室での時間はあっという間に過ぎた。自宅と違って、静かだけどそこに人がいるという空間が、どうも心地よかった。普段の睡眠不足のこともあったために、一度眠ってしまうと起きる気配がなく、物音すら立てず眠った。 「ちわーっす。先生、ここにうちの野崎来てないです?」  あまりにも深く眠る様子を見て、昼休みを終えようとしても、養護教諭は起こそうとはしなかったた。そのため、午後の授業は全て欠席。既にホームルームまで終えた時刻に、やっと聞こえた軽い声で恭也は重い瞼をほんの少し持ち上げる。 「篠崎先生……ここは保健室ですよ? もっと場所をわきまえていただかないと」 「こりゃ失敬。でっ、と……野崎ー開けるぞー」 「ちょっと!」  失礼とも思っていない返答。それを注意しようとする前に軽い声の主である篠崎が、ベッドを囲うカーテンを勢いよく開く。  面倒くさい。そう思って布団を被り、バッと身構えた恭弥だったが、開けられたのは隣のカーテンだった。 「あれ。副会長か。人違いだったな。悪い悪い。でも、副会長にはちょっとお知らせを。後で読んで、ちゃんと来いよ。副会長がこっちなら、野崎はこっちか」  再び軽い謝罪。窓際のベッドを利用していたのが、生徒会副会長であることを今、恭弥は知った。  そして二回目にして開けられたカーテンこそ、恭弥が利用しているベッドを囲うもの。話しかけるなと言わんばかりに、頭まで毛布をかぶっていたが軽々とそれを引きはがされ、眉間にしわを寄せたまま篠崎をにらみつける。 「そんな顔すんなって。ほら、やるよ。来週が期限の課題だ」 「ボーナスくれてやるみたいな言い方されても困ります」
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