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「そうそう。それそれ。毎年七月の第一土曜日にやる地元の人も招いた交流会。文化部がメインでステージに立つやつなんだけどさ……それ、野崎も出ようか」
「はあああっ!?」
過去一大きな声が出た。口を開いたがそれ以外の言葉が出てこなかった。
文化交流会について、第二学年である恭弥は去年出席はしていたため、どんなものなのかはある程度知っている。
全校生徒が休日にも関わらず体育館に集められ、吹奏楽部や書道部などの文化部がステージに立ってパフォーマンスを行う。中には有志による漫才も。それを地域の人々が見に来るというものである。
去年は出席日数の関係で参加はしたが、終始うつむいているか、時々保健室に逃げていた。そんな恭弥にとって、音が飛び交う交流会は苦痛以外の何物でもない。
「もちろん一人じゃないよ? めぼしい仲間たちはもう探しておいたから」
何を言っているんだ。そこを心配しているんじゃない。
口をパクパクさせて、篠崎を見るもにこやかな顔を返されるだけ。
突然のことに、理解も納得もできるわけがない。
養護教諭へ助けを求めたが、そちらもそちらで驚きと困惑で何も言ってはくれなかった。
「いやね、今年も俺が交流会の運営担当になってさぁ。いくら計算しても尺が余っているから、いいやつ見つけてステージに立たせようと思って。な?」
何が「な?」だ。やりたくないの一言に尽きる。
首を横に振って意思を伝えてみるものの、篠崎は聞こうともしない。それどころか言いたい事を言えた達成感で、「じゃ、気を付けて帰れよ」と言いながら歩いて去っていく。
残された恭弥は、課題と一緒に紛れていた「文化交流会についてのお知らせ」と書かれた紙をくしゃりと握りしめた。
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