Track1 最悪が連なる日

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 嫌な汗をかきながら慌てて音のした方を確認すれば、細い路地へ右折しようとした車とそこで信号が変わるのを待っていた車が互いに譲りあうことができなかったようだった。 「はぁ……」  結局信号待ちをしていた車が後退していくことで解決したらしい。右折した車は何事もなかったかのように、目的地へと向かって姿を消した。  大事にならなくてよかったという安心以外に抱いていた感情を落ち着かせるために、深く息を吐いてから、ようやく青に変わった信号を渡った。  ☆  明るい朝の校舎内には、にぎやかな声であふれている。  進級して間もない恭弥は、周りを見ることなく静かに自分の教室へ向かう。 「でさでさー――」  階段を上がり、間もなく教室というところで、男子生徒二人がふざけ合いながら降りてきた。  会話に夢中になっており、前を向いていない二人。恭弥も足元ばかり見ていたこともあって、肩がぶつかった。  あやうく階段から落ちそうになったが、そこは何とかバランスを撮り直し回避し、小さく頭を下げる。相手がどんな顔をしていたのかなど、興味もなければ考えたくもない。
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