Track1 最悪が連なる日

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 座学が基本であるが、嫌いになったものをひたすら学ぶ。それが苦痛で仕方ない。  しかも、今年は音楽教師の篠崎(しのざき)実巳(さねみ)がクラス担任になってしまった。  日頃から顔も覚えられてしまい、嫌でも付きまとってくる音楽から逃げることができない。  今も強制視聴させられているクラシックの曲から、できるだけ逃げるように画面から顔を背ける。 「はい、今のがベートーヴェンが作った曲だ。ベートーヴェンならみんな知ってるだろ? この部屋にも写真がある。ほら、この人」  篠崎が映像を止め、音楽室の壁に飾られている有名音楽家の肖像画の一つを指し示す。首元に赤い布を巻いた有名なものだ。  この人だったのかと、全員の視線がその絵に集まる。 「ジャジャジャジャーンって始まる運命とかは有名だよな。ベートーヴェンは数多くの有名な曲を作った」  黒板にカタカタとベートーヴェンについて書いていく。今後テストに出るかもしれない内容なので、しぶしぶ恭弥はノートに同じ内容を書く。
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