闇に溢れる

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セトリがわたしの服の裾を引っ張ってどこかへ連れて行く。 着いた場所では、みんなが踊っていた。体が大きいもの、小さいもの、顔のないもの、目や口がたくさんあるもの、みんなが。 「あんたも踊るぞ!」 「でも、わたし踊り方わからない」 そう言うわたしに、セトリは力強く「そんなのテキトーに動けばいいんだよ!」と言って、踊っている輪の中に引き込んだ。 輪の中に入ってしまえば、なんてことなかった。みんな違う動きをしている。バラバラだけど、みんな楽しんでいる。踊り方なんて気にしていた自分が馬鹿馬鹿しくなった。その場は温かく軽快な祭囃子に包まれて、みんなが陽気に笑いあっていた。少しして、踊る前に流れていた祭囃子が再び流れはじめて、みんな踊りをやめてばらばらに散っていく。 セトリはわたしの手を取ると、何かを握らせた。
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