闇に溢れる

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見てみると、それはかんざしで、見事な青い紫陽花が描かれていた。 「もうそろそろ祭りも終わる。これは今日の礼だ。楽しかったぞ」 光の早さで、わたしの夢の時間は終わってしまった。 最初にセトリに会った場所へ二人無言のまま向かい、別れを告げた。 「じゃあな。気を付けて帰れよ!」 と、セトリは言った。 わたしは「またね!」と返して、背を向けた。 一瞬、セトリが寂しそうななんとも言えないような表情をしているのを見た気がした。 数段降りて振り返ると、セトリは笑顔だった。 だから、わたしも笑って手を振った。 セトリが手を振り返してくれたのを見て、また階段を降りはじめた。
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