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お盆には毎年、祖母の家に泊まる。
車に揺られること三時間。
まわりが山に囲まれていて、コンビニもゲームセンターもない村。盆地だから夏は暑いし冬は寒い。子供が少ないから、遊び相手は隣の家の花ちゃんだけ。たまに年下の子たちが来ることもあるけれど。スーパーは隣の町まで行かなければならないくらい何もなくて不便だけれど、それはそれで非日常感があっていいかな、と思う。ここで過ごすのは一年にたった数日間だけなのだから。不便さを理由にここに来るのをやめるのは損な気がするくらいには気に入っている。
ここにくると、決まって同じ夢を見る。
わたしは古びた石造りの階段の踊り場に立っている。石段の両端には等間隔で青い炎が浮いている。鬼火だ。周りを見渡すと、階段は森に囲まれているらしいことが分かる。草木の奥に目を向けても深い深い闇が続いているだけで、どうなっているか分からない。下を向いても階段が続いているだけで地面は見えない。仕方がないから登っていくのだが、しばらくすると階段の終わりが見えてくる。それと同時に陽気な笑い声や太鼓の音が聞こえてきて、光が階段の先にぼんやり見える。祭りの最中だと気づいて参加しようと階段を駆け上がり、登りきったと思ったところで目が覚める。そんな夢。
せっかく頑張って登ったのに、と残念に思う。
その夢の舞台は祖母の話の舞台と酷似していた。祖母の話の通りなら、階段の先には出店が並んで異形の者たちで賑わっていたはずだ。わたしもその光景を一度見てみたいと階段を駆け上がるけれど、成功した試しはない。
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