闇に溢れる

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わたしは突然話しかけられたことに驚いて一瞬固まったが、疑問が浮かんで口を開いた。 「わたし、ここに来たことないよ」 狐はわたしをじっと見て、たしかにちょっと違うな、とつぶやいた。狐が口を開くたび、鋭い歯が目に入る。わたしを見つめる瞳は明かりに照らされて金色に輝いていた。 「……まあいいか。俺はセトリって言うんだ。あんたの名前は?」 と、狐――セトリは問うた。 「ヨリ」 「ヨリか、よろしく。せっかく祭りに来たんだ。楽しみなよ」 セトリが目を細めて笑う。 なんだか不思議なような、懐かしいようなような何とも言えない心地だった。
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