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セトリはわたしが知らないことをたくさん語ってくれたし、いろんな出店に引っ張っていってくれた。
射的、輪投げ、ヨーヨー釣り、お面屋さん。食べ物は、ニンゲンの口に合うものじゃないからとセトリに止められた。
射的は、わたしもセトリも下手で一度も景品に弾を当てられなかった。わたしたちが悔しがっていたら、店主が三メートルくらいありそうな巨体をゆすって笑った。
お面を売っていた女性は、豊かな黒髪が艶めいていて、切れ長の六つの目がそれぞれ違うタイミングでまばたきするのが印象的だった。
輪投げに挑戦したとき、わたしは五回投げて一回も成功しなかったけど、セトリは五回とも成功していて、景品をもらっていた。
景品は根付とかいうストラップみたいな形のものだった。セトリは根付に描かれた鶴が大層気に入ったようで、口角を上げて、目を輝かせ、分かりやすく喜んでいた。大きく開いた口からはやはり鋭い歯がのぞいていて、こんなに歯が尖ってたら噛み切れないものもなさそうだと思った。祖母が、入れ歯だと好物のせんべいを食うのも億劫だとこぼしていたのを思い出す。
屋店では変わった食べ物や飲み物が売られていて、本当においしいのか疑問に思った。セトリが、ニンゲンの口に合うものではないとは言っていたけど、他のみんなにとってはおいしいものなのだろうか。
焼き鳥のようなものを売っている屋台では、おかっぱの女の子が八本の腕を器用に使って調理をしていた。肉を焼いているようなのに、甘いにおいが漂っていて違和感があった。しかし、セトリはうまそうだと屋台に駆けて行くものだから、よく分からないと思った。
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