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田舎者?
――2002年。
「どうだ宏伸このキャラ、カッコカワイイだろ」
「しらないよ」
「数年後には女子の時代が来ると思う、だからオレはこのキャラでいずれ漫画家としてデビューするのさ」
「ふーん、宏隼兄さんはホントに大学いかずに漫画家になるつもりなんだね」
「ああ、前は急げだ、見てろよ大ヒットさせてやるからなー!」
――2022年現在。
ガザガザッと段ボールから、
「う〜っしゃあああぁぁぁーっ!」
ショートカットで制服を着た女の子が現れた。
「やっと祈りが届いたか・・・って汚なっ」
暗く押し入れだと気づき開けてみた。驚くほどのたくさんの派手な衣装やドレスたち、どうやら衣装部屋のようだ。
「すごい派手な服・・・っと、とにかく」
とにかく出口を探すと窓あり、悪いと思いつつカギを開けてそこから外へ。すると自分の知っている景色とはまるで違っていた。
「大きな東京タワー・・・じゃないか」
東京タワーより高い謎のタワーがあるなんてと驚くしかない。さらにそこかしこと訳のわからない場所、それでもとある二人を探すため聞き込みから始めることにした。
さすが東京たくさんの人がいる。だがまず目に入るのはほとんどと言っていいほど皆が片手に持ったモノをみていること。人に聞くとそれはスマートフォンという。これで通話とかインターネットに繋がるなんて信じられないと不思議そうな顔をすると田舎者って言われてしまった。それだけ全国に浸透してるみたい。
「あの〜すいません、高橋 宏隼と宏伸ってしりませんか?」
老若男女に聞いていくもやはり中々たどり着けない。っていうか、
「スゲー女の人みんな綺麗だな〜」
自分の世界ではコギャルメイクで目を強調アイメイクが流行っているが、ここは肌艶、化粧に至るまでメイクが何ていうか上手な気もしてもはや自分の世界とは次元が違うと思わずにはいられない。変わった景観を感じつつ探し続けていく。
「絶対みつけてやる、あんの二人〜、許さないっ!」
――とある出版社『未子ノ社』の仕事部屋。
「んが〜・・・がが〜・・・んが〜、ちゃんと期限まもってよ、んっん〜・・・」
昨日は一日中、仕事の世話をしている作家たちをを訪ねたために職場に帰ってきて眠ったのは夜中の3時過ぎでそのまま自分の椅子で目が閉じてしまった。最近の作家はアナログやデジタルなど一つに孤立する者が多く未来に向けてそれらを使い分けるように促すということも仕事に入り忙しさに拍車を掛かったためである。
「はっ、今何時だっ・・・8時か〜」
朝飯は抜きにして今日も仕事、とここ2階の窓から何やら騒がしい人たちの声。
「何だなんだ?」
だがまぁおそらくは、漫画を持ち込んでダメ出しされてトラブったのかと大体の予想はついていた。
「ふぅ」
「――のぶをだせ・・・」
「ん?」
「――ろのぶがいるで・・・」
なんか自分の名前を名指しされているような感じがすると、扉が開いて慌てる後輩。
「高橋さんっ!」
「どうした?」
「女子高生が、高橋 宏伸とヒロハヤを出せって怒ってて」
「おいおい」何者だ? 年上のことを呼び捨てにする失礼な高校生は、と鼻息をフンスカしながら一階の入り口へと向かった。
「ここにいるのは知ってるのよっ、スマホって物で調べてもらったんだからっ!」
「君っ、関係者以外は立入禁止なの」
「関係だったら大ありなんだからどきなさい」
「証拠は」
「ないっ!」
「じゃダメでしょっ」
「どいて―っ!」
「僕が高橋 宏伸だけどっ、なんのようだい?」
ほんとうに普通の制服を着たただの黒髪女子高生で会ったこともない。
「だれ君、僕は知らないよ、許してあげるからサボらないで学校にいきなさい」
「・・・違う」
「ん、なにが」
「違うって言ってんのっ、宏伸はあんたみたいなデブじゃない!」
「デ、デブってっ、失礼だな君はっ!」
「宏伸は済まし顔だったけど、漫画をヒットさせたいって言ってたお兄さんをホントは応援してたような兄弟で弟なんだから」
「え・・・」
突然の彼女の言葉に動揺する。なぜこの子が昔の兄さんと自分の事を。
「君はいったい」
「あたしは勇気 舞、世界を救うはずだった女子高生よ」
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