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お店の店長
「おお、高橋さんお久しぶりです」
「ああ、来てたんだ」
「え・・・」
「はい、少し時間が空いたので、では」
「うん、また来てね」
キラキラオーラの黒スーツ男は指でサインを出して自分の仕事へと戻っていったのだ。どうやらただの人違い。
「いまの人って?」
「常連さんだよ」
「お兄さんじゃなかったのね」
ボソッと言葉が出るくらい残念な気がした。
「残念、兄さんならあっち」
カウンターの方に向くと金髪派手メイクで店長のお姉・・・じゃなくてオカマになった宏伸の兄、宏隼・・・舞はあまりの変貌に状況整理もつかず思考停止、しかしオカマさんはパチンとウインク。
「ういっ・・・」
「宏伸ひさしぶりじゃな〜いっ、最近忙しいみたいだけど」
「編集者は年中いそがしいよ」
「ところでそこのフリーズしちゃってる子はなに?」
「この子が兄さんにお願いしたいことがあるから僕が連れてきたんだよ・・・驚くぞ」
イケメンからオカマへと神化を遂げた宏隼のオーラによって固まってしまった舞を気づかせ兄に説明をした。
「――ええーっ、あのときのキャラクターって、もしかして勇気 舞って名前っ?」
「そ、そう」
「うっそぉぉぉ〜っ、ホントォォッ? 夢みたぁぁぁ〜い」
「ひ、ひいっ!」
喜びのあまり抱きつく。
「そうそう頭の天辺近くにちょこっと髪を逆立てた方がカワイイと思ったのよね〜、目はちょっと鋭くしてギャップ萌、でも今のあたしだったら〜もうちょっと目を大きくするわね」
「兄さん」
「制服は黒なのよね〜、この模様いろんな資料を集めて考えたもんよ〜」
「兄さん本題ほんだい」
「あ〜あ、そうだったわね、っで明治神宮で?」
「ほら、舞ちゃん」
「だ、だからえっと」
首を振って目的のために正気を取り戻す。
「あたしの世界にも明治神宮があってそこで『二人に続きを描いてほしい』って祈ったら誰かの家に着いたの」
「へ〜、あたしの作った世界にも明治神宮があるなんて~、もしかしてあたしって神様だったりしてね〜」
「でもあたしたちの世界は続きが無いことでずっと時が止まってる」
さっきまでの明るい雰囲気から雲行きが怪しくなってきたと感じた宏伸。
「だから、物語の続きを描いてあたしたちの世界を動かしてっ、お願いっ!」
「舞ちゃん・・・でも兄さんは、もう」
「・・・無理」
「そ、そんなっ!」
迷った顔を一切見せずあっさりと断るのに時間は掛からなかった。
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