3人が本棚に入れています
本棚に追加
1ヶ月後
「いらっしゃませ」
「ハア〜イッ、舞チワン、今日もカワイイわね」
「そんな、恥ずかしいです」
あれから1ヶ月、舞は執念で自分の原作者の働くオカマバーで仕事をこなしていた。
「舞チワン、今日も一曲おねがーい」
「え〜、はいはいっと」
特に人気なのが20年前の歌でよく足を運ぶ30過ぎの世代には舞の歌がドンピシャ、店長であるオカマの宏隼にお客さんのリクエストと言われ仕方なく歌った。舞にとっては古い曲ではないのだが。
「ふぅ〜」
「舞ちゃんサイコーよーっ!」
「あ、ははっ」
わるい気分はしなかった。
「やぁ舞ちゃん」
「あ、宏伸・・・沙姫さん」
「こんにちは舞ちゃん」
一週間に一度だけ顔を出す宏伸だが何故かいつもスーツ姿の女性とやってきては舞と話をさせていた。
「今日もお客さんに人気ね舞ちゃん」
「あ、いえ」
「はい、舞ちゃんにこの前質問で答えてくれた好きな食べ物のいちごケーキよ」
「えっ、わ、悪いですよ、ただ答えただけなのに」
「私はその答えてくれることに感謝してるから」
「ありがとう、ございます」
「だから今日も質問タ〜イム」
「そういうことですか、わかりました」
「舞ちゃん、ありがとう、じゃあさっそく質問」
とこんな感じで宏伸が連れてきた女性の沙姫はひたすら舞に質問をしていた。
「兄さんおつかれ・・・どう、舞ちゃんは?」
「よく働くわよ、いい根性してるわ、さすが若き日のあたしが描いたキャラ」
「そっちじゃなくて」
「・・・無理はしているわね、彼女あたしのベッドで寝てるんだけど、ときどき涙をこぼしてたし」
「そうか、じゃあ兄さん」
「そうね」
兄弟二人は何かを決めたかのような話をしたあとオカマの宏隼は舞を呼ぶ。
「・・・なんですか」
「怖い顔ね」
「それは・・・お店に働かせてくれて感謝はしてるけど、あたしは宏隼・・・店長に続きを」
「舞、あんたは今日でここをクビよ」
「クビッ!」
急なクビ宣言、しっかり仕事をしているつもりだったのにどうしてと内心慌て始める。
「あんたは今日までよく働いてくれたわ・・・ずっといてほしいくらい・・・でも、もうあんたにここに居てもらう理由が無くなったわ」
「どういうことよっ、あたしはっ!」
なんとか説得しなきゃと思っていると宏伸が沙姫を呼ぶと前に出て笑顔に。
「舞ちゃん1ヶ月間あたしの取材受けてくれてありがとう、実はあたしさ、漫画家なの」
「え、沙姫さんが漫画!」
「それでね、ネタに困ってたあたしに高橋編集者からこの原稿の話を頂いて舞ちゃんをモデルに漫画描くことになったのよ」
「え・・・それって」
「物語の続きが、始まるのよ」
最初のコメントを投稿しよう!