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ずいっと顔が近づいて窓際に追い込まれた白雪は、寸前のところで叫んだ。もう少しだったのに、と舌打ちをした蒼汰に白雪は唇を噛みしめた。頭の中で悪魔が「もう流されてもいいんじゃない」と囁く。
「さーて。俺たちは退散しようか、香奈恵ちゃん。こんなところにいたら砂糖漬けにされるよ」
「そうだね」
「いやいやいやいやまっまっまって!」
椅子から立ち上がり、鞄を持ち上げ始めた彩音と香奈恵に警告音が鳴り響く。ここで帰してしまえば蒼汰と二人っきりだ。そうしたら逃れる術は完全に消え失せる。
必死に縋りつこうと身を乗り出したが、蒼汰に阻まれる。ぐっと肩を捕まれた。じたばたと暴れたが到底勝てるはずもなく。
「早く答えねぇと――になるぞ」
「なんて! なんて言ったの! いややっぱ教えなくていい、怖いから!」
恐ろしい言葉を投げられた予感に、体が勝手に拒絶した。
ぎゃあぎゃあと騒がしい白雪を一瞥したのんびり二人組は、そっと教室を出て行く。
うふふと和やかに退出するのを最後まで恨めしく見つめていたが、最後まで彼らは振り返らなかった。白状だと泣けば、蒼汰が鼻を鳴らした。小馬鹿にされた気がする。
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