危険な近道

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「なにを期待したかしらないが、夫婦(めおと)になるために必要なのは、たった一回、互いの生気を交換することだけだ。一瞬で終わる」 「せ、生気⁉」  なんだかとても恐ろしいことを聞いた気がして、血の気がサーっと引いていく。そんな璃世を見て千里が「ふっ」と息を吐くように笑った。 「人でいう“接吻”というやつだ」 「せっ……ぷん⁉」 「したことないのか?」  平然と聞かれて、璃世は絶句する。 (あるわけないでしょ!)  心中で思いきり叫んだ。男女交際をしたこともないのに、そんなものあるわけない。  すると千里は満足げに口の端を持ち上げた。 「情報屋の言った通りだな」  千里がつぶやいた声は、璃世の耳にハッキリ届いた。なにせこの距離だ。 「情報屋って……」 「細かいことは気にするな」  そう言った千里が顔を近づけてくる。顔を背けようにも、千里の手によって固定されていて無理。  心臓が早鐘を打ち、耳の奥でドクンドクンと血液の波打つ音がする。 (もうダメだ……!)  唇があと数ミリで触れ合う――というそのとき。 「いつまで寝ていらっしゃるの⁉ アタクシ待ちくたびれましてよーー!」 「スパーン」と勢いよく襖が開く音と同時に、威勢のよいその声が入ってきた。声のする方に視線を向け、璃世は目を丸くする。 「え、外国人⁉」  そこにはまるでおとぎ話から抜け出してきたかのような、金髪赤眼の美少女が立っていた。
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