危険な近道

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*** 「ねえ璃世。こっちの方が絶対()えだと思いませんこと?」 「えっと……そう……かも」  璃世は差し出されたスマホの画面を見て、ぎこちなくうなずいた。スマホの持ち主は金髪の美少女。年齢は璃世と同じくらいだが、見た目はまったく違う。  透き通るような白磁の肌。髪の色はストロベリーブロンド――ほんのり赤みの入った白金色で、背中から腰にかけて緩く波打っている。  髪と同じ色の長いまつ毛に覆われた瞳は、パッチリと大きく、ルビーのように真っ赤だった。 『どうして外国人の女の子がここに……』 『あなたにはそう見えるますのね』  驚きながらとつぶやいたら、美少女は一瞬驚いた顔をしてからそう言って微笑んだ。そうして、自分は昨日のウサギだと名乗ったのだ。  千里と違い、白ウサギはこれまで人型をとったことがなかったそう。そのため決まった容姿を持っていない。人型を目にした人が “どう見えたか”で、姿かたちが安定するのだと言った。  説明を聞いても璃世には今ひとつよく理解できなかったけれど、とにかく目の前の金髪美少女が白ウサギなのだということはわかった。  千里との接吻攻防のさなか、危機一髪というところで乱入してきた彼女は、璃世を急き立てるようにこう言った。 『今すぐお仕度なさって! 映えスイーツが呼んでますわよ!』  そういうわけで、璃世はウサギが化けた外国人美少女と京都の街を並んで歩いている――というわけだ。
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