危険な近道

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「ねえ、アリス。本当に歩いて行くの?」 「ええ。大丈夫、アタクシちゃんと行き方は調べましてよ」  そんな会話をしている今は、ちょうど賀茂大橋を渡っているところ。昨日子ネコを助けた『鴨川デルタ』も見える。  さっき見せてもらったスイーツ店は四条河原町(しじょうかわらまち)にあるようだ。璃世は昨日ここまで来るために私鉄を使ったので、なんとなくだがここから四条河原町まで距離があることはわかっている。  けれどアリスは――『アリス』というのは、璃世がつけた名前だ。人の姿をしている相手を「ウサギ」と呼ぶことに抵抗があったので名前を聞いたら、本人が好きに呼んでいいと言ったのだ。その名前がパッとひらめいたのは、おそらく彼女の服装が淡いブルーのエプロンドレスだったせいだろう。  そのアリスがスマホを片手に自信満々に言うのだから、京都に不慣れな璃世としては黙ってついていくしかない。 「それにしてもあなた、本当にいいんですの?」  跳ねるような軽やかな足取りで橋を渡りきってすぐ、振り向いたアリスが璃世に言った。
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