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橋を渡って大通りをしばらく行ったところで、背の高い樹木が生垣のようにつながっているのが見えてきた。アリスがそこを指さす。
「あちらに近道がありますのよ」
樹木の壁が切れて門のようになっているところまで来たとき、アリスがパッと手を離し駆けだした。
「待って、アリス!」
跳ぶようにして奥へと進んでいくアリスを必死に追いかける。中に入った当初は広かった道がだんだん狭くなり、クネクネと右に左にカーブしながら徐々に細くなっていく。両脇には葉を茂らせた樹木が迫っていた。
「アリスー!」
声を張り上げて呼ぶけれど、アリスは振り向かない。走るのに夢中で聞こえていないのかもしれない。必死で追いかけるも、その差はどんどん開いていく。
「アリス……足速すぎだよ……」
目的地の場所はなんとなくしか知らないのに、案内人に置いていかれたらどうしようもない。こちらはスマホどころか携帯電話すら使えない身なのだ。
少し不安はあるけれど、アリスも璃世がついて来ていないことに気づいたらきっと戻ってきてくれる。そう考え、そのまま小路を進んだ。幸い一本道なので迷いようがない。
――と思ったのが大間違いだった。
「え……、どっち?」
道がふたつに分かれていた。
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