かりそめ嫁になりまして。

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 声を上げて驚いてすぐ、カラスのことを思い出した。しかもアリスのようにスマホを使いこなすあやかしもいるということも。  それなら弟のところになんて行けるわけない。たったひとりの大事な家族なのだ。絶対に巻き込むわけにはいかない。  いったいどうすれば――。 「解決方法はある」 「教えて!」  悩んでいたところに投げ込まれたそのひと言に、璃世は一も二もなく飛びついた。入り口へと向けていた足を反転し千里のところに駆け寄ろうとした――そのとき。 「たっだいまーですわ!」 ガラガラと音を立てて勢いよく引かれた戸口に振り向くと、思った通りの美少女が立っていた。 「『たっだいまー』じゃねえ! このお騒がせウサギが!」 「いやですわ、いきなりお客を怒鳴りつけるなんて。どうなっているのかしら、この店は」 「おまっ」    全然悪びれないアリスに、千里が眉を跳ね上げる。 「自分が強引にこいつを連れ出したくせに、途中で置いていくなんて自分勝手がすぎるだろうが」 「べつにわざとじゃないですわよ?」 「あたりまえだ!」  アリスは千里の怒りから逃げるように璃世の方を見た。 「璃世、アタクシてっきりあなたがついて来ているものと思っておりましたの……。早くお店にたどり着きたくて、ちょっとだけ足が速くなってしまったのですわ」  あれが“ちょっとだけ”? と突っ込みかけたが、千里が追い打ちをかける方が早かった。 「おまえがあんなところに置き去りにしたせいでから、こいつは危なく小者に喰われるところだったんだぞ⁉」 「本当ですの⁉」  驚いたアリスが璃世の方を向いた。くもりのない透き通った目に見つめられるだけで、ついさっき文句を言ってやろうと思っていたことがどこかへ飛んで行く。璃世はなんだか言いにくいと思いつつも口を開いた。 「そう……みたい」  するとアリスの顔色がサーっと青ざめ、慌てて璃世のもとに駆け寄ってきた。
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