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それは、ある同窓会的なイベントだった。最初は断るつもりだったのだけれど、親しい友人からどうしても来てほしいと頼まれ、また、昔僕があこがれていた女性も来るということを聞いて、迷いが生まれ、そしてあの男も来るだろうことは分かっていたけれど、できるだけ顔を合わさず、何も話さないようにすればいいと思って、参加することにしたのだ。
そしてその当日。あの男には会わないようにと気を付けていたのに、そのイベントの会場についたほぼ直後、あの男の方から話しかけてきたのだ。顔を見たとたん、すぐに彼だと分かった。笑い方が、彼なのだ。あまりにもいきなりだったから逃げることもできず、僕は彼と話すことになった。
彼は、普通に昔のことを懐かしむように、話を始めた。僕も意外とすんなり、彼と話すことができた。そういえば、あの嫌なことをされる前までは、こんなふうに普通に親しく話ができていたのだ。そう、彼とは仲がよかったのだ。時間が、僕たちの間に生まれたひずみを治してくれたのだろうか。
実際、話していると、僕の中にこびりついていた、「許さない」という感情が少しずつ剥がれていくような気がした。いや、実際に剥がれていくのが分かった。これで、この感情から解放される。僕はそう思った。
けれど、違ったのだ。
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