こびり付くもの

3/4
前へ
/4ページ
次へ
 「許さない」  僕はつぶやいていた。えっ?と聞き返されて、僕も驚いたけれど、今の言葉は確かに僕の発したものだった。僕の中では、「許さない」という言葉が、黒くこびり付いていたそれが、剥がれた、というよりは、動き出し、暴れ出していたのだ。  「許さない」  と、僕はまたつぶやく。まだ笑っている相手の顔が、とても嫌なものに見える。何故あんなことをしておいてそんなふうに笑えるのだろう。あんなこと?そう、あんなことだ。覚えていないけれど、とてもひどいことだ。それなのに。時間が解決してくれたとでも思っているのだろうか。それとも、覚えていないのだろうか。それならなおさら。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加