こびり付くもの

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 覚えているのはここまでで、その後僕が何をしたのかは思い出せない。聞いたところによると、僕は彼を殴り倒し、さらに殴り続けて、彼は今意識不明らしい。全く覚えていないし、実感もないのだけれど、きっと本当の事なのだろう。今僕は、牢屋のようなところに閉じ込められている。  そして、それが事実なら、もう「許さない」という感情は消えていてもいいはずなのに、まだ消えていない。それはまだ、僕の中に黒くこびり付いているのが分かる。まだ殴り足りなかったのだろうか。それとも、殴ったことを覚えていないから、消えないのだろうか。それとも。  本当は、薄々気づいていたのに、気づいていないふりをしていただけだったのかもしれない。確かに、彼のことは許せなかった。けれど、それだけではない。深呼吸して、手を強く握る。僕は、彼に傷つけられて、たったそれだけでたくさんの時間を無駄にしてしまった自分のことも。  腕を振り上げ、自分を殴った。思ったよりも力が強くて、反動で僕は床に倒れる。そして、黒くこびり付いているものが、少し薄れるのを感じた。
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