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それを見ると途端に緊張してきた。
「とりあえず今日はここで寝るんだ」
「…はい、」
「あと、食事は別の部屋で取ることになっているが、今日はここに運んでもらおう」
「はい…」
「何か聞きたいことはないか」
「いえ、ございません」
突然上の空になる小春に不思議がりながらもテキパキと使用人たちに言いつけ、食事を持ってくる。使用人たちは皆人間とそう変わらない見た目をしているが、たまに尻尾が出ていたり角が生えているものを見る。それは常にそうなのかたまたま出ているのかはわからない。
満腹になるまで食べ終えると、湯船に浸かった。檜のいい香りのする立派な風呂に感激して一時間以上浸かっているとのぼせてしまったようで、風呂から出るとフラフラだった。
風呂に浸かりながら宵のことを考えていた。彼にとって自分は“必要”な人間だから、傍に置いてくれるだけだろう。花嫁としては一番に重要な妖力が強いのだ。
しかしそれで十分だと思っていた。
「ああ!小春さんだ!」
その声に振り返る。聞きなれたというほど親しいわけではないが、彼の声は場を和ませる力があるように思う。緊張していたらそれを解いてくれるような、そんな力だ。
自然に笑顔になる小春は軽く頭を下げてから「葉瑠さんですよね」と言った。
「ええ!そうです。名前を覚えてもらえて幸栄です。“僕”が小春さんを見つけたのですからね!」
そんなことは自慢にもならないと思うのだが、そう言って胸を張りそこをポンポンと手を当てる葉瑠に可愛いと思った。
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