プロローグ

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プロローグ

「そろそろ決めてくださいよ。当主になって一か月も経つというに…未だに花嫁候補がいないなんて。昨日だってせっかく僕が探してきたのに一目見るや否や追い返すなんて。女嫌いもいい加減にしてくださいね。妖力だってそれなりにあったんですから」 170センチほどの小柄であるがゆえ男の“子“に見える使用人の一人は腰に手を当て鬼司家当主である鬼司宵へ立腹した様子で言葉を続ける。 「そもそも宵様は、」 「分かった分かった。だが仕方がないだろう。妖力も大したことのない、我儘なお嬢様など花嫁候補にすらしたくはない」 「そうは言っても…どうするんですか。何といっても鬼司家の当主ですからね!子孫繫栄はもちろん、結婚は大前提です」 甘栗色の髪をした使用人、葉瑠はくりくりとした目元も相俟ってかやはり子供にしか見えないがもう十八になる。 座椅子にどっぷりと腰かけながら窓の外に目をやった。 漆黒の空に満月が光を放って存在感を示していた。 人間とあやかしが混在するこの日本。 見た目は人間とはそこまで大きく変わることがない。だが、容姿から能力あらゆる分野で人間を超越するあやかしという存在は人間よりも格上なのは間違いない。 そして、その中でも鬼の妖であり、かつ数百年も前からあやかし界をまとめ上げてきた鬼司家の一族はどの妖よりも権力を持っていた。
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