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しかし宵は嘲笑した。
「汚らしいのはここまで彼女を虐めるお前たちではないのか」
その言葉に辺りが静まり返る。涼音は顔から首まで真っ赤にして下唇を噛む。
おどおどとする小春を立ち上がらせ、「あなたの意思を聞きたい」と言った。
小春は望んでいた、いつか自分を必要としてくれる人が現れ愛し愛される…そんな相手が現れるのを。
小春は見上げるほど長身の宵に目線を合わせた。
少なくとも彼は自分を必要とはしてくれている。だったら、ここにいるよりもずっといい。
小春は微かに口元に笑みを浮かべた。そしてゆっくりと二度頷く。
「では、彼女の意向も聞いたところで…―小春、あなたを鬼司家に連れて行こう」
「待ってください!認めませんよ、なんで小春が…」
「彼女が俺の妻として相応しいからです」
宵の目には強い意志が宿っていた。その威圧的な視線を向けられると両親も涼音も何も言えなくなったようだ。急に押し黙り、そして俯いた。
「行くぞ」
葉瑠にもそう告げ、小春は手を握られたまま屋敷を出た。
しかし、体力が限界を超えていたのも事実。足がもつれる小春を見ると、宵は自然に小春を抱き上げる。
「あ、あの…っ!自分で歩けます!」
「いい、これくらい何の問題もない」
「そうですよ、小春さんは骨と皮だけじゃないですか、風が吹けば飛ばされちゃいますよ~こういう時は黙って人を頼るのがいいんです」
葉瑠にそう言われ、渋々抵抗をやめた。急に眠気が襲ってくると、小春は安堵した表情を浮かべたまま宵の胸の中で目を閉じた。
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