プロローグ

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それ故に、当主は絶対に子孫繁栄を義務付けられている。そういうわけで鬼司家の当主になった宵は使用人でもある葉瑠(はる)が妖力の強そうな人間の女を毎日毎日連れてくるのだが、宵が首を縦に振ることはない。 自らが宵の花嫁に、と積極的に手を挙げる者もいるがどれも宵の目にかなう女性はいなかった。 というのも宵は大の女嫌いだったからだ。 「妖力も弱いのにわざわざ妻に迎え入れるのは無理だな。メリットがない」 「じゃあ妖力の強い女性を連れてきたら絶対に決めてくれますね?!」 宵は適当に返事をした。 「花嫁…か、」 そんなもの必要ないのだ。だが、妖力の強い女性は必要だった。 鬼司家の当主は妖たちを束ねる重要な役割を担う。妖とて皆が温和で問題を起こさないわけではない。妖力の強い妖は特に厄介だ。たまに人間を襲うものもいる。そういう妖を退治するものもまだ、宵の役目なのだ。宵は鬼司家の中でも誰よりも妖力の強い鬼の妖だった。 しかしそれは常に維持できるわけではない。弱まった時に必要なのが妖力の強い人間だ。 どういうわけか妖同士ではそれを吸収することが出来ない。 だから妖たちは妖力の強い人間を妻にするのだ。 宵は立ち上がると寝室へと向かった。 現れるはずがないと思っていた。運命などないのだ。結婚に理想など必要ないのだから。
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