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「あぁ、それから。今日からは奥様と呼んだ方がいいですね」
「お、奥さま?!」
「ええ、だってあなた宵様の花嫁でしょう?」
「正式にはまだ…」
「でももう決まったも同然ですよ。だってあの宵様があなたでいいといったのだから」
「…私で?いい?」
そうですよ、という結は続けた。
「鬼司家の当主はいわば…あやかしの帝。それなのに花嫁が見つからなかった。いえ、正式に言うとそれなりに妖力の強い候補はいたのです。しかし…宵様は首を振らない。元々女嫌いなんですよ、“めんどくさい“そうで」
そうですか、と相槌を打ちながら正式に結婚となるとどうなってしまうのだろうと不安に襲われる。
「ふふ、可愛らしいお顔をしているのね。実はあなたの体を拭いたのは私なんです」
「ええ!!」
結の手がすっと小春の頬に触れた。目を見開き固まる。
「何をしている」
と。
突然乱暴に開く襖に二人の視線が注がれる。
「あぁ、宵様。心配して見に来たのですか」
「だったら何だ。その手を離せ」
宵はそう言うとずかずかと床の間に入ってくる。そしてしゃがみ込み、小春の顔を覗き込む。
「体調はどうだ」
「…あ、ありがとうございます。あの、こんなに綺麗な浴衣を着せてもらって。それから…体も結さんに拭いてもらって」
が、そのワードに宵の顔がみるみる不機嫌になる。いや、怒っているといった方が正しいかもしれない。
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