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「着替えさせたのは私だよって言った後に男の姿になってやろうかと思ったの。驚くかなって」
「何を馬鹿なことをしようとしてるんだ」
「だって、なんだか反応が可愛いでしょう?それにこの妖力は相当ね。私も制限なしに常に化けられるわけじゃないのだけど…小春さんに触れただけでしばらくこの格好でいられるわ」
そうは言われても見えない力だ。
本当に自分にそんな力があるのか分からない。
「おそらく小春はあの家庭環境のせいで外出がほぼ出来なかった。それによって小春の妖力が外に漏れることはほぼなかったのだろう。人間で妖力の強いものは共通して成長するにつれ妖力が増すのだ。二十歳でそれがピークを迎える」
「それは初めて知りました。あの、私は宵様に必要な人間ということでしょうか」
「そうだ」
「そうですか。それは…本当に良かったです」
誰かに必要とされたことなど一度もなかった。
「小春はとても綺麗な心の持ち主だと思っている」
そう言うと初めて見たときのあの威圧的で高貴なオーラとは真逆の慈愛に満ちた目で小春を見る。このような眼を向けてくれた人は初めてだった。
「そういえば、小春さんのお部屋は用意します?だとしても今日中は難しいと思うのだけれど」
「それなら問題ない。俺の部屋に連れていく」
「え、え…!」
「それはいいですね、何といってもこの妖力です。何かあれば大変です」
「この鬼司家で何かをしようとするあやかしはいないだろう。いるとすれば外部のものだ」
小春は宵の部屋へと案内される。
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