二章

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怪我、ともう一度諳んじた。あやかしと人間との関係の均衡を保つため、鬼司家は時に危険な場面にも向かわなければならないのだ。 そのような話は聞いたことはなかった。外界との接触を禁じられていたせいで知らなかっただけで普通の人は知っていることなのかもしれない。 「政府とそういう契約をしている。元々はその代わりに妖力の強い女を鬼司家の妻として探しては連れてきていた。だが、向こうもそうなれば名家など身分のいい女性を連れてくるようになった。名家出身かどうかは別にどうだっていいのだが妖力が“普通”の女性ばかり連れてくる。それならば自身で探した方がいいとなった。先代からはほぼ政府の仲介はないと聞く。妖力の強さは俺たちあやかしの方が分かっているから」 今も尚、人間とあやかしが共存出来るのはこの人たちのお陰なのだと知った。 「それならばっ…私がお役に立てるということですね」 「そうだ。助けがほしいことも増えるだろう。その時は頼む」 「はい!分かりました」 小春は喜んだ。生きてきて一番に喜んだ瞬間かもしれない。自分にしか出来ないことがあるのだと。 「この屋敷は鬼司家の当主とその使用人たちが住むところだ。だが、敷地内は相当広く、何棟もの離れがある。その中に俺の両親もいる。今も健在だ。挨拶はそのうちでいい、とにかく今は体を休めるんだ」 頷くと、宵の部屋を案内された。二階もあるようだが、ほぼ使用していないようだ。 屋敷内は和室が多い印象だが洋室もあるようだった。 「失礼します…」 宵の寝室に入るが、既に布団が二つ用意されておりそれがすぐに目に飛び込んできた。
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