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「あ、小春様とお呼びしなければいけないのに…つい、」
「いいえ!私などに様など!それに…あなたのお陰で今日はとっても美味しいご飯を食べることが出来たし、久しぶりにお風呂に浸かれたわ。本当にありがとう。こんな幸せなことはないの」
「ええ~ただご飯食べてお風呂に入っただけでしょう?でもまぁあんな劣悪な環境にいればそう思うか…。あ、そうそう、花嫁ということはですね、もちろんですが子供を作らねばなりませんよ!」
「……え、」
小春は目をぱちくりさせ思考を停止する。
「こんなに妖力の強い奥様だと…相当優れた子供が産まれます!そうすれば鬼司家としてしばらくは安泰でしょう」
「こ、子供…子供、子供…」
「小春さんもしかしてどうやって作るのか知らないのですか?男女がこう…一つの布団の中で、つまり!」
「何をしてるんだ」
頭頂部から足先まで熱が巡っているのがわかるほど、全身が熱い。
いつの間にか葉瑠の背後に仁王立ちしている宵の姿に葉瑠も小春も首を縮ませる。
「そんな威圧的に睨まないでくださいよ…。小春さんに色々と教えてただけです」
「余計なことを教えなくていい」
いくぞ、と言って小春の手を取る宵の熱が伝わってくる。
それだけでドキドキする自分にどうかしてしまったのではと思った。言動には荒っぽさが出ていたのに、小春の手を握る時は大切なものに触れるように握ってくれるのだ。
―宵様はきっと、優しい人だ
そう思った。
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