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邂逅
オレンジ色の空。
さまざまな人間が家を目指す時間だ。
そんなとき、事件は起こる。
毎日のルーティン。
学校帰りのついでに町の見回りである。
自分の与えられた見回りコースは終盤に差し掛かっており、無事に終えられそうであったが現実はそうもいかない。
「やだぁぁ!!」
「だれか、誰か来て!!」
女の子たちの叫び声。
少し先の曲がり角あたりだと推測し、肩に掛けていたスクールバッグをするりと素早く下ろすと同時に全力で駆け出した。
声の元へ着くと、そこには座り込んでしまっている幼い2人の女の子。立ち上がろうにも恐怖心とともに背中にある重みも邪魔しているのだろう。
その前には黒いモヤを纏い、獣の形を模倣した単眼の異形。
今回はオオカミの真似でもしたか、ご丁寧に「グルルル……」と唸り声の芸付きだ。
右腰に下げていたボトルを左手で掴んで外し、中の水を前方の空中へと投げ出す。
放物線を描く水と、大きな球体になった水、小さな粒になった水。その下を走ってくぐり抜ける。
そのまま力なく地面へと落ちるはずだが、それらすべては意志を持っているかのように右手を目指す。そうして水たちが集まると、レイピア様の形を成した。
少女たちを上を跨ぐように飛び、異形の背後に回ると同時に大きく左下から斜め上へと切り裂いた。
形を成せなくなった異形は断末魔をあげ、ボロボロと崩れ消滅した。
「2人とも大丈夫?」
「お姉ちゃん〜!」
「こわかったぁぁ〜!」
「なるべく家にまっすぐ帰るんだよ?あと、ちゃんとブザーも押してね?」
「ごめんなさい……」
「探検したくって……」
涙をぽろぽろとこぼす2人を慰め、帰路へ背中を押したとき。
「す、すごい……!」
目の前にいたのは、まるで子供のように無垢な目をした少年だった。
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