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「あ、いたいた! 松川、橘っ!! 顧問が体調悪くて早退したから、今日は部活なしだって」
「え、まじか。教えてくれて、ありがと」
メンバーが教室を出て行った後に、やっと陽愛が名案を思いついたかのように口を開いた。
「ねぇ、陸空。ミートローフ作りなよっ」
「え?」
「思い入れのある料理なら、作った方がいいよ」
「でも……」
彼女の提案に少し戸惑う。
今朝、料理をしないと啖呵を切った手前、作るのには抵抗がある。――――でも、本当は作りたい。二人が「美味しい」と言いながら、幸せそうに食べる表情を見るのが何より好きなのだ。
陽愛はその気持ちを察したのか、俺の手を握る。
「大好きなお姉さんたちの笑顔を見たくないの?」
その言葉に思わず目を見開く。
「陸空が料理するのが好きなのは、食べる人の幸せそうな表情を見て、自分も幸せな気持ちになるからでしょ? 特にお姉さんたちの」
そこまで言われて、やっと自分の気持ちに気が付いた。
そうか、あの二人の笑顔が見たかったのか、自分は――――。
彼女が最後のひと押しをするかのように、背中を叩く。
「陸空は、仲直りしたいんでしょ?」
俺は彼女の手を強く握り返し、頷く。
「だったら、決まってるじゃん。陸空のやるべきことは」
そう言って、最高の笑顔を向けられる。
いつも彼女は自分の言って欲しい言葉を必ずくれる。本当に自慢の出来た彼女だ。
「陽愛、いつもありがとう」
「いいよ。その代わり、明日のデートはたくさん甘やかしてもらうからねっ」
「うん、分かった。楽しみにしてて」
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