第3章 ミートローフ派~陸空ver~

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「あ、いたいた! 松川、橘っ!! 顧問が体調悪くて早退したから、今日は部活なしだって」 「え、まじか。教えてくれて、ありがと」  メンバーが教室を出て行った後に、やっと陽愛が名案を思いついたかのように口を開いた。 「ねぇ、陸空。ミートローフ作りなよっ」 「え?」 「思い入れのある料理なら、作った方がいいよ」 「でも……」  彼女の提案に少し戸惑う。  今朝、料理をしないと啖呵を切った手前、作るのには抵抗がある。――――でも、本当は作りたい。二人が「美味しい」と言いながら、幸せそうに食べる表情(かお)を見るのが何より好きなのだ。  陽愛はその気持ちを察したのか、俺の手を握る。 「大好きなお姉さんたちのを見たくないの?」  その言葉に思わず目を見開く。 「陸空が料理するのが好きなのは、食べる人の幸せそうな表情(かお)を見て、自分も幸せな気持ちになるからでしょ? 特にお姉さんたちの」  そこまで言われて、やっと自分の気持ちに気が付いた。  そうか、あの二人の笑顔が見たかったのか、自分は――――。  彼女が最後のひと押しをするかのように、背中を叩く。 「陸空は、仲直りしたいんでしょ?」  俺は彼女の手を強く握り返し、頷く。 「だったら、決まってるじゃん。陸空のやるべきことは」  そう言って、最高の笑顔を向けられる。  いつも彼女は自分の言って欲しい言葉を必ずくれる。本当に自慢の出来た彼女だ。 「陽愛、いつもありがとう」 「いいよ。その代わり、明日のデートはたくさん甘やかしてもらうからねっ」 「うん、分かった。楽しみにしてて」
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