花火大会

1/10
107人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

花火大会

「今日、花火大会だね」 「ようやく再開されるのか〜」 「いいなぁ〜行きたかったなぁ」 「行かなくても、会社から見えるだろう?」と、言い放つ部長の言葉は、ただの意地悪にしか聞こえない。 ーーどうせ一緒に観る彼氏も居ないけど……それでも、屋台でビール片手に女友達と観たかったなぁ〜 花村 美香(はなむら みか) 25歳  飲料メーカー営業部の事務員 会社は、大きな川沿いにあり、毎年 夏には夏祭りと花火大会が開催されていた。ここ数年は、流行り病の為、中止になっていたが、ようやく開催される。  飲料メーカー勤務だから、特に夏は、繁忙期。 私は、事務員だから、あまり関係ないが一応、営業部の人が帰って来るまで待つ。 なぜなら、今日は25日だから給料日。給料明細を渡す日。朝から既に外まわりで不在だった人には、まだ渡せていない。間に合わなければ、明日でも良いのだけれど…… やはり、この日に渡したい!という気持ちと、いつもの癖のようなもので、仕事をしながら待っている。 「そんなの部長に押し付けて帰っちゃえば?」と、決して私には言えないことをサラッと言ってのけるのは、同期の橋上 渉(はしがみ わたる)27歳主任だ。 「ちょっと! 聞こえたら大変! あなたは、良いわね。何でも言えて!」 「ハハッ 何とも思ってないからな」 そう!打たれ強いのか?バカなのか?上司に怒られても全然懲りない性格のようで羨ましい。 「私には、無理よ。そういう所、妙に真面目だから」 「だよな〜お前は優等生だもんな」 なんか、ちょっとムカついた! ーー私だって……
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!