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「あ、いや、ホントに嬉しそうだなと思って」
「うん、すっごく嬉しいよ。だって、花火ずっと見たかったんだもん。3年ぶりだもんね」
「ああ、そうだよな」
「うん」と又見上げる。
「綺麗〜」
「綺麗だな」
花火と花火の合間に、
「さあ、飲め飲め! コレも食べろ!」と、おつまみを開けてくれる片瀬。
「うん、ありがとう! ふふ、なんだかお父さんみたい」
「誰がお父さんだよ!」と笑っている。
父もそうだった。いつも自分は後回しで、『食べろ!食べろ!』と、あれこれススメてくれた。
そんな父は、去年他界した。
「片瀬って面倒見が良くて、気が利いて、人の気持ちが良く分かるから凄いよね」
「そうか?」
「だから、大出世して、ホント凄いよ」
「でも、本当に知りたい人の気持ちは、分からないんだよな」
「そうなんだ。あれ? 片瀬って彼女居たっけ?」
「残念ながら居ないんだよな」
「そうなんだ〜何何? 気になる人でも居るの?」
「ブッホッ」
「ちょっと! 大丈夫?」
「ゲホッゲホッ、だ、大丈夫」
「ハハ、図星だな」
「俺のことより、お前は?」
「私? 居ないよ。でも、そろそろ真面目に考えないとね。もう25だし」
「真面目にって、結婚か?」
「うん、やっぱり子ども欲しいし……」
「なるほど」
「あ、上がったよ! 写真撮ろう!」
私は、上がった花火に夢中でスマホを向けた。
そして、また、花火が途切れた時に片瀬が、
「写真撮ろうよ!」と、自分のスマホを出した。
「うん」
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