復讐のモンブラン

5/12
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
その日の夜 俺は机に向かって封筒を眺める ほんの少し気合入れ過ぎたせいだって分かってるよ! けど、必要なくなったからって自分では捨てられない... かといって机にしまって兄ちゃんに見つかっても気まずい... そもそも俺の言い訳なんて聞いてくれるような人じゃない! どうしたものか... 考えこんでいると、隣の部屋(兄ちゃんの部屋だ)のドアが開く音がした 嫌な予感がして、とっさに手元にあったスラムダンク4巻に封筒を挟んで隠す とっさに明日の準備をしていたフリをする 「拓登ー!」 バンっ! 予感的中!さすが俺!! 声がかかると同時にドアが開く 「何?」 俺は余裕かまして振り向く 「シャープの芯、予備持ってない?学校に置いてきたっぽい」 「あるよ。何本?」 「そのままくれよ!明日、俺のやるから」 「え?!」 引き出しから予備の替え芯を取り出したところで丸ごと取られた 「サンキュ!」 「ちょっと!俺、兄ちゃんのもらっても困るんだけど?!」 「は?何で?」 「兄ちゃんの使ってる芯、書きにくいんだよ...」 「そんなこと、気にすんなよ?」 「や、だって...」 「じゃあ、明日自分で新しいの買って来いよ?」 「え?」 「だって、俺のじゃ使いずらいんだろ?かといって、使ったものを中途半端な状態で返すのは、俺の美学に反するからな!」 「いや、いいって!半端でいいから!」 「もういいだろっ!明日の練習メニュー決めなきゃで忙しいんだよ!」 兄ちゃんがチラッと俺の机の上を見る 「お前も漫画ばっか読んでないで、ちゃんと勉強しろよ?」 「してるよ」 「それに、スポーツは漫画じゃなくて実践の方が面白いぞ?」 「漫画だって面白いよ?兄ちゃんも読んでみない?」 「漫画読むくらいならランニング行く」 この人の頭は全てが筋肉で出来ているらしい... 気が済んだのか、兄ちゃんは部屋から出て行った 「ふぅー...」 安堵のため息が漏れる このまま明日の準備をして、もう寝よう... 漫画に挟んだ封筒の事を思い出す 取り出して眺める フッとさっきの会話がリフレインした 『漫画よむくらいならランニング行く』 そうだ、兄ちゃんは漫画を読まない これは俺だけのものなんだ.. それなら、ここが一番安心かもしれない 気持ちの整理が出来るまで、ここにしまっておこう 俺は封筒を再びスラムダンクに挟むと、そのまま本棚へ戻してベッドへ入った
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!