復讐のモンブラン

6/12
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
あっという間にカレンダーが新品にかけ変わった 大掃除の済んだサッパリとした部屋の壁、めくられていない表紙が妙に違和感をかもし出している 立て続けにスマホが鳴った 『ネギが足りないって!』 『まだ家出てないだろ?』 『くる時、買ってきて!』 「了解っと」 家出る前で良かった 今日はみんなで齋藤の家に集まって、年越しそば、からの初詣 絶対寒いよなー ベランダに出て痛感する 「さっみー」 夜はもっと下がるだろうし... 考えた結果、Tシャツと厚手のパーカーに着がえて、ダウンジャケットを持って部屋を出る 玄関で靴を履いていると兄ちゃんが帰ってきた 冬用の防寒ジャージ姿だけど、いつ見ても寒そうな格好だなぁ 「おかえり。どこ行ってたの?」 「ランニング。お前、いつ帰って来るの?」 「今日は啓一の家に泊まるから、明日の午後とかかな?」 「ふーん」 「兄ちゃんは初詣行かないの?」 「行かない。寝正月!」 「友達と行けばいいのに。まぁいいや。じゃあ、行ってきます」 兄ちゃんの横をすり抜けようとした時、急に腕を掴まれた 「何?!」 「お前、その格好で行くのか?」 「え?」 そう言われて、玄関の姿見で自分の全身をチェックする 特におかしなところはないと思うけど... 「そうだけど、何で?」 「それじゃ寒いだろ?これからもっと気温下がるぞ」 「だからちゃんと厚手の」 「拓登っ!」 少し強い口調で、兄ちゃんが俺の言葉を遮った 「お前、年明けたら中2だろ?自分の体調管理くらい出来るようになれよ」 「でも」 「いいから。早く着替えてこいよ」 「...はい」 くっそー!!! 俺だってちゃんと考えてるよっ!!! って言えたら良いのに 兄ちゃんは当然の顔して俺の後ろから付いて来て、部屋の前で俺の着替えが終わるのを待っている ニットを着たけど無言で首を横に振られ、最終的には、これでもかってくらいの厚手のセーターを選ばされた これにダウンなんて絶対着られない ただの雪だるまにしかならないだろ? だけど、そんな理由はこの人には通用しない。 自分はそんなに薄着なくせにっ!!! あまりに理不尽すぎるっ!!! 「...兄ちゃんだって、寒そうじゃん」 ボソッと呟いた声をキャッチされ、思い切り睨まれた 「俺はお前と違って鍛えてるから大丈夫なんだよ!!早く選べ!!」 思いっきり着ぶくれだるまな姿を、啓一たちにこれでもかと笑われたのは言うまでもない 俺が後5年早く生まれてたら...! どうして世の中、こんなに不条理なんだろう... 俺は決めた!! もし俺に弟が出来たら、思いっきり可愛がってやるんだ!!! お賽銭の転がる音がして、柏手を打ちならす 《次は俺にも弟が出来ますようにっ!!!》
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!