復讐のモンブラン

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「ただいまー」 「おー」 リビングに入るとソファに寝転んだ兄ちゃんから、えらく義務的な返事がくる 俺はとにかく暑くて、セーターの腹部をパサパサやりながら水を飲みにキッチンへ向かった 一気に水を飲み干してリビングまで戻ると、テーブルの上に見覚えのある漫画が数冊置いてある。 思わず2度見するくらいの衝撃が走る 慌てて兄ちゃんの手元を見ると、すでに8巻になっていた 「兄ちゃんっ?!」 急いで駆け寄って、無意識的に兄ちゃんの腕を掴んだ 「何だよっ!いってーな!!」 兄ちゃんは怒って俺の手を振り払うと起き上がった 「兄ちゃん、それ…」 俺の指先を視線で辿って、自分の手元にあるスラムダンクのことだと認識したらしい 「あぁ、ちょっと借りたわ」 何でもないかのように兄ちゃんが笑う ご機嫌のようだ でも、今は兄ちゃんの機嫌なんてどうでもいい 「兄ちゃん、漫画は読まないって…」 「亜美が面白いって言うから」 「俺が言ったときは…」 そこで初めてテーブルの上に4巻も置いてあることに気がついた 反射的につかんでパラパラめくる ない… 逆さにしてバサバサやっても、何も落ちてこない… 聞きたい… でも聞けない… 「もしかして、あの手紙探してんのか?」 ドキッとして兄ちゃんの方を向くと、誇らしげな笑顔で兄ちゃんが言いはなった 「渡しておいたぞ!」 頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る 「誰にっ?!」 「亜美」 「だから何で亜美なんだよっ!!!」 「里美に渡しておいてくれって言ってあるから心配すんな!」 「何で、里美っ…兄ちゃん、もしかして中身見たの?」 「おう!男らしくて良い内容だったぞ!」 「勝手に人のもん読むなよっ!」 「うるせーなっ!大声出すなよ!漫画の一冊や二冊読まれたくらいでカリカリしてんじゃねーよっ!」 「漫画じゃないよっ!!」 「いちいちうるせーよっ!そんなに大切なもんなら、しまう場所くらい考えろっ!自分の失敗を人のせいにすんじゃねぇっ!」 「…っ!!!」 声に出せない感覚が身体の内からほとばしる 兄ちゃんは漫画を勢いよく置くと、怒って立ち上がりリビングから出ていく スラムダンク8巻がソファーの上で2、3度跳ねた
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