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第3話
翌朝、熱が下がり回復したランディはネロとアルを連れて村中をまわり、気絶して助けてくれた礼をしていた。
その間リーラは、薬草を大きな釜でぐつぐつと煮て、怪我をした傷口に塗る薬、飲み薬や痛み止め、解熱剤、滋養強壮、栄養補給など、村の人達に必要な薬を作り忙しくしていた。
「ただいまぁ」
「おかえりなさい。ご飯にしようか」
元気な双子の声が聞こえてきたので、
リーラはキッチンに移り、食事の準備をしていると、こちらに向かってくる足音がした。
「手伝うぞ」と、ランディがキッチンに顔を出したが、その後ろにいたはずの双子はもうテーブルについている。リーラは苦笑いをした。
「ランディさんは怪我人なので座ってて下さい」
「ランディでいい…おい、チビ助ども手伝え、こっちこい」
「はーい」
いつの間にかすっかり二人はランディに懐いていた。呆気に取られてリーラが見ていると、双子は嬉しそうにランディにまとわりつき、手伝いをしている。
いつもは甘えん坊の双子が少し頼もしく見えた。
「リーラ、ランディすごいんだよ。僕達を一緒に抱っこできるんだ」
「ぐるぐるってやってくれたんだよ」
興奮気味に二人が話し、賑やかな食卓が始まる。
「怪我してるんだから、そんなお願いしゃダメでしょう」
「大丈夫だ、これくらい。それより、村の人達から聞いたが、この辺は最近災害が多いらしいな」
「そうなんです。この辺一帯の山に水が溜まっているようで、突然大量の水が流れ出てしまうんです。僕の畑も以前被害にあいました。だから今はみんなで事前に避難することにしたんです」
「そうか…」
そう言うと、ランディは黙り込み何か考えているようだった。
包帯を解き、傷口に新しく薬を塗る。熱が下がっているものの、傷口はまだ新しく痛々しい。
「痛みますか?」
「大丈夫だ。ありがとう」
「後は…はいこれ。飲んでくださいね」
リーラは飲み薬をランディに渡した。
「…えっと、これ…」
「ちょっと苦いですけど、よく効きますから。飲んでください」
昨日から薬草で作った飲み薬を飲ませていた。それを前に、渋い顔をして薬と睨めっこしているランディを見て双子は、クスクスと笑っている。
「ランディ、お薬飲めないんだ」
「僕、飲めるよ、えいって飲むんだよ」
リーラが育てる薬草はすくすくと育ち、その薬草で作る薬はよく効くと評判だ。
ランディは渋りながらも薬を飲み、「どうだ」と言うが若干涙目になっているので、双子が笑い出す。
「よし、治った。それじゃあ、水浴びに行くか」
「「いくー!」」
ここに来て、こんなに楽しそうにしているネロとアルを初めて見る。最近は活発になったので、中々遊んであげられなかったとリーラは思い双子を眺めていた。
水浴びから帰ってきたネロとアルはランディに抱えられてかえってきた。思いっきり遊んでくれたようで眠そうである。
「リーラ、遊び疲れて二人が眠たそうだ。ベッド迄運んでいいか?」
「ありがとうございます。こっちです。お願いします」
二人を寝かせて、ランディが改めてリーラに向き合う。
「リーラ、看病してくれてありがとう。一度帰るが、明日必ずまた来る。何か欲しいものはないか?持ってくるぞ」
「い、いいえ。特に困っているものはありませんので。それより、今から帰るって…大丈夫なんですか?」
「ああ、問題ない。ライズも…俺の馬も世話してくれて感謝する。こいつら起きたら明日また俺が来るって伝えといてくれ」
「わかりました。そしたら、これ持って行ってください。塗り薬です。傷口に塗ってください」
ありがとうと言い、ランディは颯爽と馬に跨り駆け抜けて行ったが、彼の左手に巻かれていた包帯が痛々しく、リーラの心に残っていた。
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