見つめるのも程々に

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「まぁ、捕まらないように気を付けて下さいね」  そう言って笑顔で手を振りその場を去ろうとする華菜。 「あ、ちょっと待てって」  その華菜を追うように修平が声をかける。 『あの忙しそうな中、喫茶店に入っても一瀬さんに話しかけるタイミングなんかありそうもないし、華菜と喋りながら帰るかな』 「あれ?ストーキングはもういいんですか?」 「だから俺はストーカーじゃないって。一瀬さん忙しそうだったし、それに女の子を夜1人で帰らすのもなんだし、一応送って行くよ」  アンティークな雰囲気の喫茶店を少し恨めしそうに見つめながら、修平が苦笑いを浮かべていた。 「へぇーなんかついでみたいで別に無理しなくてもいいんですけどね。まぁナンパされるのも面倒なんで送ってくれるんなら助かりますけど」  修平の言葉に少し嫌味を含めながら笑顔で返し、2人帰路につく。 「もうすぐ花火大会もあるんですよ先輩。いいんですか?行動しなくても。石橋を叩いて渡るのも良いんですけど、度が過ぎると叩き過ぎて渡るはずの石橋を、自分で壊してしまいますよ?」  華菜が横を歩く修平の顔を覗き込む様に笑いかける。 「いや、わかってるよ。……ただ駄目だったらそこで終わっちまうんだ。そうなったらどうしたらいい?」 『華菜は簡単に言うが、こっちは1年ぐらい片想いしてるんだぞ。一瀬さんに彼氏がいる間はひたすら待って、春頃に噂で別れたと聞いて、やっと巡ってきたチャンスをなんとか物にしたいんだ。慎重になるもなるだろ』 「まぁ、気持ちわからなくもないんですけどね。ただ周りで見てると、なんかまどろっこしいんですよ。純愛もいいんですけど、やっぱり好きなら『なんとしてでも手に入れる』みたいな気概も必要かと」  寧ろ華菜の方が男らしいかもな。  そんな事を思いながら修平は華菜を家まで送り届ける。 「まぁ今日はありがとうございました。せっかく送ってくれたんで少しぐらい上がっていきますか?あ、でも私、魅力的だから先輩上げたりしたら危ないかな?」  華菜が舌を出しながら悪戯っぽい笑顔を見せた。 「馬鹿な事言ってんな。今日はこのまま帰るよ」  そう言って手を上げて帰ろうとした時、華菜に呼び止められる。 「先輩。送ってくれたお礼に少しぐらい協力しますからね」  そう言って華菜は手を振っていた。  もし本当に協力してくれるならありがたい。  女性ならではの目線でアドバイスをしてくれるかもしれないし、女同士なら上手く話して情報を聞いてきてくれるかもしれない。  そんな事を考えながら修平は1人家路を急いだ。
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