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作戦会議
次の日、修平は華菜と学校の中庭で落ち合っていた。
「それで私に聞いてこいと?」
華菜が修平を見つめ、問いかけていた。
「ああ、頼むよ。なんとか進めるために」
修平が顔の前で手を合わせ、必死に頼み込んでいた。
「ふぅ……私、一瀬先輩と面識ほとんどないんですよ?誰かのストーキングの被害者だって事ぐらいしか知らないし。そんな私がいきなり行って『一瀬先輩って今彼氏とか好きな人いないんですか?』って聞いて来るんですか?難易度高過ぎません?」
華菜が深くため息をつきながら修平を恨めしそうに見つめる。
確かに同じ学校の人間とは言え、さほど挨拶も交わした事もない間柄でプライベートの重要な情報を聞き出せというのは至難の業だった。
「え、ああ、やっぱりそうか。ははは」
修平が頭に手をやり乾いた笑いをしていた。
「はぁ、まぁ何かとっかかりでも作ってきますよ。でもあまり期待はしないで下さいね」
そう言って華菜が眉尻を下げ、苦笑いを浮かべていた。
「あ、あと、送ってもらったお礼がコレじゃ割に合わないんでご飯ぐらい奢って下さいね」
「ああ、そうだな。高級レストランとかじゃなければ連れて行くよ」
「じゃ、そういう事で」
そう言って華菜は片手を上げてその場を後にする。
それから3日が経ちバイト中に華菜から声をかけられた。
「先輩。報告もあるんで今日バイト終わったら一緒に帰りましょうか」
華菜は同じバイト先ながら普段と違いバイト中はほとんど無駄な話はしてこなかった。
華菜言わく『私、見た目が少しチャラく見られるからバイト中ぐらいは真面目にしないと』と言っていた。
それなのに華菜がそんな事を言ってきたので修平も少し期待してしまう。
「お疲れ様でしたー」
修平と華菜が2人揃ってバイト先を後にする。
そのまま2人で並んで歩いて行き、夜の公園でベンチに腰掛ける。
「夜の公園か。ちょっと雰囲気あるな」
「それはどっちの雰囲気ですか?私の純潔に危険が迫ってる感じですか?それともこっちですか?」
そう言って華菜が自分の胸の辺りで手首をぶらっと下げて幽霊のゼスチャーをして見せる。
「ははは、随分古い仕草だな。それと誰が純潔なんだって?」
「え?ああそうですか。一瀬先輩の情報いらないんですね。わかりました。さよなら。あとこう見えて私乙女なんで」
そう言って華菜はスっと立ち上がりその場を去る仕草をして見せた。
「いや、ちょっと待って。ごめん、俺が悪かった。だからまだ行かないで下さい」
慌てて懇願する修平を見て口角をやや上げて、華菜は再びベンチに腰掛けた。
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